花森安治さんのことば「ただ一人を相手にして」

2010年2月に配信したメールマガジンで、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」でおなじみになった花森安治さんについて書いています。こちらに再掲載します。

「宣伝トイフ者ハ、
千億人ヲ相手ニスルナド
大ソレタコトヲ思フベカラズ。

タダ一人ヲ相手ニシテ、
根カギリヤルベシ」

これは、花森安治さんの言葉です。

「暮しの手帖」は、戦後の日本に、
豊かで賢い暮らし方を提案し続けた雑誌です。

花森さんは「暮しの手帖」の編集長でした。

花森さんは、表紙の絵も描いたし、文章も書いたし、
キャッチコピーや挿絵も書いていました。

だから、花森さんがどんな人かを言い表すのには
「編集者」というより「職人」と言ったほうが
ふさわしいのかもしれません。

私は、そんな花森さんの書くキャッチコピーや文章に触れたとき、

ここに集客のヒントがぎっしり詰まっている!
と思いました。

なぜ花森さんの書くものは、
心に色濃く残るインパクトがあるのでしょう。

それはやはり、冒頭の言葉にすべて込められているのではないでしょうか。

「広告宣伝とは常に一人一人の個人に訴えかけるもので
なければならない。」

花森さんはこのように言っています。

「タダ一人ヲ相手ニシテ」

これを実現するために、他の編集部員に怒号を
飛ばすことが日常茶飯事だったようです。

「わかりやすい言葉以外は使うな。
ぜんぶひら仮名で書いてみて、そのままでわかる言葉を使え。」

「難解でもないことを難解にいうのは
バカな学者がやることだ。
難解なことをわかりやすく表現し、正確につたえる、
それが編集者のしごとだ。」

ただ一人を相手にすることに集中し続けた
花森さんの言葉たちです。

ひとつひとつの言葉へのこだわり。
これこそが、インパクトのあるキャッチコピーや文章の
産まれる秘密なのだと思いました。

みなさまも、キャッチコピーや文章を書くことがあったら
「タダ一人ヲ相手ニシテ」考えてみませんか。

一戔五厘の旗 花森 安治

花森安治の編集室 唐沢 平吉

花森安治の仕事  酒井 寛